障害のある人への差別の解消と人権の実現のために-NPO法人風雷社中の理念として-
誰かが差別されて、不当な状況にあることを放置したくない。
それが、風雷社中の基本です。
そして、すべての差別に対することはできませんが、わたしたちは障害のある人への差別と向き合い、不当な状況の解消に取り組むために活動をしています。
障害の社会モデルを立脚点として
「障害者を弄くり回して、仕事している気になっている専門家や障害者施設では、障害のある人を取り囲む差別を解消していくことは出来ないし、それって、なんの問題も解決していかないってことじゃん」って中村(風雷社中理事長)は考えました。
今いわれている、障害の社会モデルが、まだ一部の人たちが掲げようとしていた時です。
施設や障害児だけの学校で障害児者を分離隔離し、機能障害に対してのアプローチが、まだまだ障害者福祉の中心であった時に(まあ、いまでも、実態はあまり変わってないですが)、風雷社中は「障害のある人が社会に参加していくことがインクルーシブな社会を作る。だからガイドヘルプ事業を活性化させて「街に障害のある人がガンガン参加していく状況を作ろう」、そして「そのガイドヘルプを障害のある人と接点のなかった人たちに担って貰うことをすすめ、ガイドヘルプを通し障害のある人へのアシストを学び、障害のある人と密度の高い接点を持たす」ってことを狙い設立しました。
わたしたちは「差別」は、これまで社会が取り組んできた啓蒙啓発では解消できないと考えています。「差別は駄目だよ」ってスローガンをどんなに掲げても、また「差別って、こんな感じだからやめよう」って座学を繰り返しても、差別は解消されないと考えます。 近年、社会心理学の研究がすすみ、差別は自らが所属するカテゴリーの外の存在に対して防衛的に生じる認知機能であるとされています。また差別を構成するステレオタイプと偏見は単なる思い込みではなく、ある種の「信念」として人の意識の中に組み込まれているとも。障害のある人への差別でも同様の状況があると思っています。
差別解消のための3つの取り組み(支援の一般化)
障害のある人たちへの差別を解消していくために、わたしたちが出来ることはなんでしょうか?
3つの取り組みが必要だと考えています。
1,身近な街の中で、普通に障害のある人と出会い、やり取りをする機会を多くしていくことが必要だと考えます。
本来は学校がインクルーシブな状態になることが必要だと思います。しかし、まだ日本の社会合意の中でインクルーシブ教育は遅々として進みません。いま出来る取り組みとして、単独では街に出ていくことが困難だった人たちがガイドヘルプを利用してガシガシ街にでて、街のメンバーとして認知されていくことが必要だと考えます。
また、障害のある人が街の中で「障害のない人」と同じように自立した暮らしをすることを実現すること自体が、「障害のない人たち」が障害のある人を「自分たちとは違う」と捉えることを防ぐとも考えます。これまで自立生活支援の対象とされてこなかった重度知的障害のある人の自立生活をすすめることが必要なことだと考えています。
2,障害のある人と一緒に共同体験をしていくことが必要だと考えます。
そこで風雷社中は障害のある人と接点のなかった人たちにこそ、ガイドヘルパーとして障害のある人と一緒に街に出て行くことをすすめています。ガイドヘルパーは障害のある人を一方的に「助ける人」ではなく、障害のある人が街に出ていく時に必要とするアシストを対価(報酬)を得ることで対等な関係となり提供する存在です。
また、ガイドヘルパーは、障害のある人と向き合い、障害のある人を「どうにかする」のではなく、障害のある人の隣に立ち一緒に街と向き合い、障害のある人が必要とするアシストをしながら、一緒に街を変えていくパートナーなのだと考えます。
3,「障害のある人への差別ってなんだろう?」「どうすれば解消できるのだろう?」を知ることや、体験することを進めていくことが必要です。
なにが「差別」であるのかを知る機会を充分に地域の中で持つことが必要であり、その差別を解消するための積み重ねや最先端の取り組みにアクセスできる状況を作ることが必要なのだと考えます。
風雷社中は設立から掲げてきている理念「支援の一般化」に基づき、これら3つの取組みを事業として実現してきています。そして、有効と思われる新たな考えや行動に積極的に取り組み、トライ&エラーを繰り返し、自らが常に進化していくことを基本的なスタンスとしています。
目先のビジョンと少し先のビジョン
障害のある人の差別解消や権利の実現は、まだまだ不十分な状況ですが、過去から現在に向かって、ゆっくりと確実に(時には揺り返しもありながら)進歩してきています。
風雷社中は、その先に何を実現していくべきかを考えながら活動を展開しています。
知的障害のある人たちが利用できる障害福祉サービスは施設施策に偏向している状況から、更に重度訪問介護など個別での支援がすすんでいくと考えています。
現状でも、その担い手であるヘルパーが不足していてサービスが十分に機能していない状況ですが、利用は更に拡大されていき、その担い手のあり方自体への見直しが必要になります。
国は「見守り」など寄り添い型の支援を軽視する傾向にあり、充分なん予算措置がされていない状況と言えます。また、それを担うヘルパーについても、その存在の重要さが認識されていない状況です。
風雷社中では個別支援の利用拡大を受け止めていくために、一般の人たちが更に支援者として活動できる状況の整備をすすめていきます。それは養成研修等による人材確保の拡大にとどまらず、新しい枠組みでの人材育成や支援のマッチングシステムの構築が求められると考えています。
知的障害のある人達の入所施設への新規入所数を大幅に減らし、地域での自立生活を障害者支援の主流としていくための取り組みを構築する必要があると考えています。そのための土台作りとして地域への学習活動やアピール活動を積極的におこすコミュニティーオーガナイズの活性化が必要なのだと考えます。